JRグループが2020年春にJRパス販売のオンラインサイトをオープンすると発表。これにより訪日外国人のパスの使い勝手が大幅にアップし、販売店は大きなダメージを受ける可能性があります。発表内容が詳細に渡っていないので、私の予想を含め、内容を見てみましょう。

JRパス販売の現状

JRパスの販売方法についてはずっと変わっておらず、日本に来る前に居住国でJRパスの引換券を購入。日本到着後、指定された駅(成田空港駅など)で実際のパスと引き換えて、そして、列車の予約をするという流れです。ここ数年、料金設定を高めにして、JRパスの日本国内での販売を行っていますが、あくまで暫定的なものです。

料金もほとんど変わっておらず、運賃値上げや税率の変更に際して、パスの代金が上がる程度でした。

JRパスは指定された旅行代理店での販売となっており、近くの旅行代理店で気軽に買えるというものではなく、近くに代理店がないケースがほとんどです。訪日旅行者がこのように増加する以前は、対面販売が基本となっていましたが、ここ10年の訪日旅行者の増大により、それはなし崩しになり、代理店各社がそれぞれオンライン販売を始め、オンラインでの購入が一般的になりました。しかし、JRパスはウェブチケットなどに対応しておらず、オンラインで購入しても、購入に際しては別途送料が加算されています。

座席の予約の現状

座席の予約については、JR東日本が自社管内とJR北海道管内の主要列車に限り、列車座席のオンラインでの予約を行っていましたが、観光のメインルートである東京〜京都・新大阪の東海道新幹線を始め、ほとんどの列車が予約不可。年末年始の繁忙期など、座席が取れない旅行者の間では不満が高まっていました。現場でも多少の混乱があったと思われます。

我々在留邦人がJRパスを利用する場合、JR東日本が運営する予約サイト「えきねっと」を利用することで、全国のほとんどの列車を予約することができましたが、これは公式に認められている方法ではなく、また、チケットの引き取りがJR東日本、JR北海道管内、JR西日本の一部の駅に限られるため、利用には制限がありました。

訪日旅行者に対する各社の思惑

販売や座席予約の問題は今に始まったことではなく、数年前から問題になっていました。ただ、訪日旅行者に対する熱度はJR各社の間で差異があり、JR東日本、JR西日本、JR九州が積極的。上場企業でもあり、資金面でも問題ありません。

JR北海道も訪日旅行者の人気の高い旅行先として積極的ではありますが、会社の財政が厳しい状況でなかなか資金が投下できず、JR東日本との協力もあって、なんとか対応している状況。JR四国も財政状況が厳しく、限られた資金で、こちらもなんとか対応しているのが現状。

JR東海はそこまで訪日旅行者に頼らずとも、十分に利益が出ているので、JR他社に比べると、その熱量が低いと言わざるを得ません。JRパスでのぞみに乗れないのも、その証左と言えるでしょう。

こうした各社の思惑もあり、なかなか事が運ばなかったのですが、ここに来て、ようやくJRパスを販売するオンラインサイトの開設となりました。

こうした不満を解消するJRによるオンラインサービス開始

というわけで、正直、やっとここまで来たか、というのが実感です。JRの公式リリースによると、今わかっていることが以下の通りです。

  1. JRパス公式オンライン販売サイトのオープンは2020年春
  2. オンラインサイトは英語、中国語、韓国語の3ヶ国語対応
  3. 公式サイトでJRパスの購入と座席予約が可能
  4. JRパスが自動改札に対応
  5. JRパスが指定券自動販売機に対応

一つずつ見ていきましょう。

オープン時期は2020年春としかわからず、3月なのか4月なのかもわかりません。4月は桜のシーズンでもあり、訪日旅行者が非常に多い時期でもあるので、なんとかこの時期に間に合わせたいところです。

サイトは3ヶ国語対応ですが、アジア圏に限らず、マーケットを広げる意味でも、スペイン語やフランス語などにも対応してほしいところですが、これは将来に期待します。

3のパスの購入と座席予約が可能になるという点が、今回最大のメリットです。パスはウェブチケットのような形式になると思われます。JR各社がそれぞれ発送するのは非現実的ですから、これは間違いないと思います。このオンラインの時代に、旧態然とした引換券的なものを使い続けることは販売サイドと旅行者双方にとって、何のメリットもありません。

座席の予約については、JRの殆どの列車がカバーされると予想しています。それでなくては意味がないでしょう。また、窓口の業務おいては事前に予約してもらうことで、JRパスの交換の際に顧客一人あたりにかかる時間が相当減少し、顧客の待ち時間が減る。窓口のスタッフの負担も減る。ウィンウィンです。

4のJRパスの自動改札に対応も、現場には朗報です。現在、JRパスの利用者は有人改札を通る必要があります。しかし、大きな駅の駅員改札は非常に忙しく、JRパスの利用者も結構長い時間、待たされることがあります。それでクレームをもらうこともあるでしょうし、自動改札を抜けて進んでもらった方が駅員さんにとってもメリットでしょう。

5の指定券自動販売機に対応も4と同様で、現場の作業効率アップに繋がります。その分窓口にくるJRパスの利用者が減るわけですから。ただし、日本の鉄道はかなり複雑なので、自動販売機が英語や中国語、韓国語に対応していたとしても、JRパスの利用者がどの程度まで自分でできるのかは未知数です。結局みどりの窓口での対応が大きく減ることはないのかもしれません。

JRパスオンライン販売が引き起こすであろう問題

JRがこれを問題と捉えているのかどうかわかりませんが、仮に旅行代理店販売の料金とJR公式オンラインでの料金が同じなら、現在JRパスのオンライン販売を行っている会社は壊滅的なダメージを受けると思います。

私が「JRがこれを問題と捉えているのかどうかわかりません」と書いた理由は、JRパスのオンライン販売をしている会社の大半は日本の大手旅行会社と契約している販売店だからです。

JRパスを仕入れている旅行会社は以下の4社のみです。

  • JTB
  • 日本旅行
  • 近畿日本ツーリスト
  • 東武トップツアーズ

グーグルで検索を掛けて、JRパスのオンライン販売で上位にこれら会社はあまり出てきません。実際に上位に出てくるのは、上記4社からJRパスを仕入れて販売している会社です。だから、JRにとってどうでも良いとは言いませんが、JRもそれを分かった上で、今回のオンラインサイトの開設に踏み切っていると思います。

もちろん、公式オンラインサイトと販売店での代金に差を付けるかもしれません。実際、JR西日本が販売しているパスでは、販売店価格、JR西日本公式サイト価格、日本販売価格の3本立ての価格設定があります。このような方法をとって、販売店との棲み分けを図る可能性もあります。現時点ではオンライン販売を行っている旅行会社は戦々恐々としていると思います。

JRオンライン予約が引き起こすであろう問題

仮に、日本のみどりの窓口と同じように、指定券の販売を1ヶ月前の10時スタートにしたら、列車によっては指定券がものすごく取りにくくなる可能性があります。

例えば、新宿から河口湖に向かう特急富士回遊はすでに指定券が取りにくい列車になっていて、外国人旅行者専用列車か!と思うほどの状況なのが、一層拍車がかかることになると思います。また、人気の高い高山に向かう特急ワイドビューひだも指定券が取りにくい列車になる可能性大です。年末年始などの繁忙期だけではなく、1年を通じて、早め早めの予約が必要になるかもしれません。

サイトの開設時期や列車の予約方法など、今後の詳細発表が待たれます。