福島、茨城、栃木のダイヤモンドルートに見る合同オペレーションの難しさ

大内宿インバウンド
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福島、茨城、栃木の三県が合同でダイヤモンドルートと銘打ち、各県の観光地をプロモーションしています。それぞれの観光地は魅力十分なのですが、いくつかの問題点も垣間見えます。

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コンセプトは非の打ち所なし

武士道、歴史、自然、芸術など、特に欧米旅行者にとって、必要な要素がすべて揃っています。それ以下の記事でも触れました。

3つの県が集まることで、予算も増えますし、より大きなプロモーションを打つことができます。ダイヤモンドルートのウェブサイトはめっちゃかっこいいです。

ダイヤモンドルート、オフィシャルサイトより

ものすごい予算をかけて作ったのがよくわかります。特に福島は東北大震災で大きな被害を蒙り、その後も負のイメージが付きまとったので、まず、イメージ回復を図る必要があり、このようなビジュアルに秀でたサイトができたのかと想像します。

このプロモーションをディスるわけではありませんが、いくつか問題があります。私の旅行業での経験も踏まえて、お話します。

ダイヤモンドルートなのに、ルートになっていない

サイトのどこを見ても、どうやって回ったら良いのか書いてません。各県内各所の名所についても、すべて外部リンク誘導なので、各県内各所が点になっていて、線として結びついていません。正直私が見ても、これはどこにあるんだろうと、一つ一つ外部リンクのアクセス情報を確かめないのと場所がわかりませんでした。これでは、せっかくカッコいい動画でイメージアップしても、これでは集客効果を最大化できていません。「ルート」と銘打つには、やはり一つの線上に名所が点在している形が望ましいし、それがきちんと分かるような情報の提供が必要だと思います。

オフィシャル動画のコメントもたくさんの称賛の声が溢れています。

動機付けは十分にできているわけですから、それを引き出すもう一手が必要だと思います。

多言語情報の不備

サイト情報は現在英語のみです。多言語であればなお良いのですが、それは一旦横に置きます。サイト内で紹介しているアトラクションが外部リンク誘導になっていて、しかも外部の各アトラクションのオフィシャルサイトが日本語サイトしかないケースが多々あります。各アトラクションもマンパワーや予算の問題もあるでしょうから、このダイヤモンドルートのサイトがそれを補わないといけません。ある程度の情報はダイヤモンドルートのオフィシャルサイト内で見られるようにすべきでしょう。

空港や都内からのアクセス情報の不足

成田空港、羽田空港、東京駅、品川駅からのルート情報がありますが、グーグルマップによる既存ルートの案内のみです。しかも、検索した福島へのアクセス情報のみで、しかも表示されませんでした。

いろんな場所を紹介して、どうやって行ったら良いのかがわからないのでは、これまたユーザーフレンドリーなサイトではないと思います。

今すぐに、成田や羽田からの直通バスを走らせるのは現実的ではありませんが、せめて、ルートという形態を取り、出発点へのルートをきちんと案内すべきではないでしょうか?

茨城が福島、栃木と離れすぎ

鹿島神宮、大洗磯前神社、牛久大仏と茨城県内の見どころがすべて海沿いなので、福島や栃木の名所と一緒に回る理由が見当たりません。これなら、茨城の名所を見て東京に戻り、改めて栃木や福島へ行くほうが、理にかなっています。

せめて、水戸から郡山へ続く水郡線をルートにして、水戸藩の史跡や袋田の滝、奥久慈温泉郷などを絡めれば、ルートになると思うのですが、このエリアはスルーされています。この理由について後ほど考察します。

問題は各所の協力体制?

このプロモーションは当然、福島、茨城、栃木の三県が行っているわけです。皆さんも経験があるかもしれませんが、こうしたジョイントオペレーションは予算が増える代わり、制約も増えます。以下、全て私の推測ですが、問題点を考察してみます。

三県平等に

当たり前ですが、3つの県を平等に紹介しなくてはいけません。このエリアで最もネームバリューが高いのは日光ですが、日光ばかり押すわけにはいきませんし、それではこの地域全体を売るという本来の目的は果たせません。しかし、平等が過ぎると、ポイントが見えづらくなります。ストロングポイントをどのように使うかがポイントです。

この場合のストロングポイントは日光ですが、福島へアクセスポイントにはなっても、茨城にはなりません。これが一つの課題です。

どこでも紹介できるわけではない

水戸、奥久慈、袋田の滝を入れれば、茨城から福島へ繋げると触れましたが、このエリアは紹介されていません。理由はいくつか考えられます。

各県にある観光協会は県内の観光地を平等に紹介するわけではありません。極端に言えば、観光協会に加盟していない市町村や事業者があってもおかしくありません。市町村でそうしたところはほとんどないと思いますが、小規模な宿泊施設では加盟していないケースもあるでしょうし、そうした事業者は観光協会は当然紹介しません。

水戸、奥久慈温泉郷、袋田の滝が茨城の観光協会に加盟していないわけではありませんが、これが入らなかったのは、色々と理由があるのかなと思います。

奥久慈温泉郷はともかく、水戸や袋田の滝であれば、似たような場所が紹介されていますので、コンセプトに合わないということはないと思います。他の地域との重複を避けたという理由も考えられなくはありませんが、ちょっと理由としては弱いですね。

どちらかといえば、同県内の他のポイントを選択する理由があった考えるほうが辻褄が合うでしょう。一番考えられるのは予算の問題。こうしたプロモーションを行う場合、観光協会としては、いつも協会を支えてくれる事業者を優先したくなります。まして、観光協会がその事業者の期待に応えられていない(=送客できていない)場合、なおさらです。

もちろん、県として大々的に売り出したいという観光地があれば、それは優先されます。

やはり水郡線ルートは必要

茨城を入れて、ルート選定するなら、やはり水戸から奥久慈温泉郷、袋田の滝を入れて郡山へ抜け、水郡線ルートは必須だと思います。これがないとルートになりません。その後、会津、喜多方を回って、鬼怒川、日光へ抜けるルートがもっともしっくりきますね。JR東日本も協賛していますから、水郡線にジョイフルトレインを走らせてもらって、このルートを通る動機付けをしてもらいましょう。せっかく奥久慈清流ラインという別名を持つ路線なのですから。

ただ、茨城には申し訳ないけど、日光から会津に抜けるルートだけでやっても、コンセプト的には十分成立します。サムライスピリッツは会津で堪能できますし、歴史は会津、日光、大内宿で楽しめます。自然は会津から日光まで、トレッキングルートはふんだんにあります。日光や大内宿近辺では歴史を絡めてトレッキングルートの選定も難しくありません。妻籠・馬籠ルートに近いものをパッケージングできれば、定番コースに成長させられるかもしれません。

本当に茨城をディスっているわけではありません。茨城は海沿いのポイントだけでパッケージングしたほうが無理ないとの思いからです。

以上、すべて私見によるものでした。

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